岩手数理科学セミナー


不定期開催(年数回) 会場,曜日,時間は各回ばらばらなのでご注意ください.

第20回
2019年1月25日15:30- 岩手大学理工学部第3会議室
佐藤宏平(小山工業高等専門学校一般科)
TBA


第19回
2018年11月2日15:30- 岩手大学理工学部第3会議室
土屋卓也(愛媛大学大学院理工学研究科)
非正則三角形分割上の有限要素誤差解析について

有限要素法の誤差解析を数学的に厳密に行う場合は、領域の三角形分割の幾何学的形状に対して正則性(regularity)を仮定するのが通常である。 これは、三角形分割内の三角形、あるいは四面体があまり潰れてはいないということを仮定する条件である。 しかし、一橋大学の小林健太教授と土屋の最近の一連の研究により、この仮定がなくても有限要素解の誤差評価が得られることがわかってきた。 ただし正則性を仮定しない場合は、誤差の上限に三角形の外接円の半径が現れてくる。 この講演では、この一連の研究の結果を、なるべく平易に解説する。


第18回
2018年10月19日15:30- 岩手大学理工学部第3会議室
山本有作(電気通信大学大学院情報理工学研究科)
実対称固有値解法の基礎と最近の発展

実対称行列の固有値問題は,電子状態計算,構造解析,統計計算など,科学技術計算の様々な分野に現れる基本的な問題である. 本講演では,実対称固有値問題の数値解法について,密行列(ほとんどの要素が非ゼロである行列)の場合を中心に,基礎から最近のトピックスまでを報告する.

第1部では,基本的な数値解法について紹介し,並列化や,キャッシュメモリの有効利用のための最適化など,高性能計算に関する側面についても解説する. 第2部では,時間に依存する実対称固有値問題A(t)x(t)=λ(t)x(t)を取り上げ,報告者が最近研究しているアルゴリズムについて紹介する. このアルゴリズムは,荻田武史・相島健助の両氏が最近提案した固有ベクトルの反復改良法に基づいており,数値的安定性が高く,かつ,高性能計算向きという特徴を持つ. 本手法について,収束性に関する理論的解析やメニーコアプロセッサでの性能評価など,最近の結果を報告する.


第17回
2018年8月28日14:00- 岩手大学理工学部ものづくり協創工房 (銀河ホールのある建物の2階)
岩波翔也(九州大学大学院システム生命科学府)
造血幹細胞移植の数理モデルと定量的データ解析

造血組織は、長期的な自己複製能と全ての血液細胞に分化する多分化能を持った造血幹細胞(hematopoietic stem cells: HSCs)によって維持される。 近年、1細胞移植の実験系とマウスでの蛍光タンパク質の発現を利用して、長期的な再生産能力を有しながら、 分化能が骨髄球に限定された細胞(myeloid-restricted progenitors with long-term repopulating activity: MyRPs)が発見された。 さらに、HSCsを培養し1回分裂させ2個の娘細胞を得ることで、MyRPsはHSCから直接分化することが示唆された。

本研究では、従来のHSC分化のモデルにMyRPsによる骨髄球産生のバイパス経路を組み込んだ数理モデルを開発し、HSCの1細胞移植実験のデータを解析した。 この時、各移植実験の個体差を考慮した非線形混合効果モデルを用いることで、実験ごとのばらつきを説明しつつ、骨髄球産生の速度を推定した。 この結果から、生体内での造血組織における骨髄球産生のバイパス経路の存在と重要性について議論したい。 なお、本研究は、スタンフォード大学・山本玲博士との共同研究である。


高木舜晟(九州大学大学院システム生命科学府)
数理科学的手法を用いたHTLV-1感染の定量的解析

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、感染細胞の生存・増殖により生体内で継続的に感染し、 感染者に成人T細胞白血病(ATL)や脊髄症などの関連炎症性疾患 (HAM) を引き起こす。 また、HTLV-1はウイルス自らのDNAを未感染の宿主(ヒト)の細胞のDNAに組み込む。 このウイルスDNAが組み込まれた部位(プロウイルス組込部位)をIDとして感染細胞が識別できる。 新規感染した細胞では、組込部位がバラバラである一方、クローン増殖した細胞の組込部位は同一となる。 興味深いことに、近年の次世代配列解析により、ATL患者と無症候のHTLV-1キャリアの間では感染細胞の集団構成に違いがあることが明らかになった。 すなわち、組込部位のばらつきの度合い(クローナリティ)が、ATL患者と無症候のキャリアでは質的に異なるのである。 本講演では、この質的な違いを定量的に再現し、病態進行の予測を可能にするシミュレータの背景と原理を解説したのち、シミュレータから得られた理論的な知見について述べる。


第16回
2018年8月24日15:00- 岩手大学理工学部2号館303号室
川越大輔(Department of Mathematics, Inha University)
Surface Riesz transforms and spectral property of elastic Nemann-Poincar\'e operators on less smooth domains in three dimensions

elastic Neumann-Poincar\'e (eNP) operator は, 線型弾性方程式である Lam\'e system の重層ポテンシャルで定義される(特異)積分作用素で, そのスペクトル解析はプラズマやメタマテリアルといった物理の分野とも関連している. この eNP operator は, 自身はコンパクト作用素ではないものの, ある多項式作用素としてはコンパクト (polynomially compact) となることが知られている([1], [2]). ただし, [1] では 2 次元の $C^{1, \alpha}$ 領域で eNP operator が polynomially compact となることが示されたのに対し, [2] では 3 次元の $C^{\infty}$領域で eNP operator が polynomially compact になることが示された. 領域に対するこれらの regularity の仮定は証明手法に依るものであり, 本質的ではないと考えられていた. すなわち, 一般には 3 次元の $C^{1, \alpha}$ 領域でも eNP operator が polynomially compact になることが予想されていた. [2] では, Surface Riesz Transform (SRT) と呼ばれる特異積分作用素で eNP operator を近似し, 擬微分作用素の理論を用いて SRT のスペクトル解析を行うことで, eNP operator が polynomially compact であることが証明された. この結果を踏まえ, SRT の性質を擬微分作用素の理論を用いずに精査することで, 先の予想を肯定的に証明することに成功した. 本講演では, 最初に eNP operator を Lam\'e system から導出し, 次に [1] と [2] の先行研究を紹介して証明のおおまかな方針を述べ, 最後にどのような方法で証明を改善したかを簡単に述べる. なお, 本講演は Hyeonbae Kang 氏 (Inha University, Korea) との共同研究に基づく.

[1] K. Ando, Y. Ji, H. Kang, K. Kim and S. Yu, Euro. J. Appl. Math 29 (2018), 189--225.
[2] K. Ando, H. Kang and Y. Miyanishi, Int. Math. Res. Notices, rnx258 (2017), https://doi.org/10.1093/imrn/rnx258
[3] H. Kang and D. Kawagoe, arXiv: 1806.02026.


第15回
2018年7月30日15:30- 岩手大学理工学部第3会議室
保國惠一(筑波大学システム情報系情報工学域)
線形行列束の部分固有値問題に対する周回積分法

線形行列束の固有値問題に対して、複素平面上の指定領域内部におけるすべての固有値及び対応する固有ベクトル(部分固有対)を計算することを考える。 このような固有値問題は、制御論、ゲーム論、量子物理学、選点法、機械学習において現れる。 解法にはQZアルゴリズムが知られ、すべての固有対を求めるために用いることができる。 ところが、行列に摂動が加わると固有値が存在しなくなることがあるため、所与の行列が固有値を持つように摂動を加えることで求解する手法が近年提案されている。 一方、様々な固有値問題に対して統一的な枠組みを適用することで部分固有対を効率良く求解できる手法には周回積分を用いたものがある。 この種の解法は、極が固有値であるような行列レゾルベントに対する周回積分で形成したフィルタにより所望の固有値に対応する固有空間を抽出する。 本講演では、これらの解法について近年の進展や実問題への応用例を紹介し、周回積分に基づく手法を線形行列束の固有値問題へ応用するような定式化を与え、 本手法が適当な条件下において所望の固有対を計算できることを示す。 数値実験例により、本手法が所望の固有対を効率良く計算できることを示す。


第14回
2018年5月23日15:30- 岩手大学理工学部第3会議室
荒井迅(中部大学創発学術院)
力学系の大域的な分岐とその計算について

力学系の分岐や安定性を議論する上で、不動点や周期軌道の回りの局所的分岐を調べるだけでは不十分で、ホモクリニック分岐などの大域的な分岐を調べる必要が生じることがよくある。 しかし、大域的な分岐は局所的な分岐と異なり、微分を計算するだけでなく、大域的なトポロジーの変化も記述する必要があるため、計算機上で扱うのが難しい。 この講演では、力学系や分岐の基礎理論を解説した後、有向グラフによる力学系の表現や位相幾何学的な道具を用いて、大域的な分岐を研究するアルゴリズムを紹介する。


第13回
2018年4月27日15:30- 岩手大学理工学部第3会議室
渡邉扇之介(小山工業高等専門学校一般科)
Min-Plus代数おける固有値問題とその応用

実数に無限大を加えた集合に2つの二項演算,和minと積+を定義した代数をMin-Plus代数という. Min-Plus代数は半環という代数構造を持ち,同じ代数構造である,和をmaxで定義したMax-Plus代数やトロピカル代数(幾何),超離散といった多くの名前で研究がされている. 本講演では,Min-Plus代数の諸性質を述べた後,Min-Plus代数における行列(Min-Plus行列)の固有値問題について議論する. Min-Plus行列の固有値は,その行列から作られる有向グラフの閉路と関係することが知られている. また固有ベクトルはグラフの最短路問題と関係することも知られている. 本講演では,Min-Plus代数における固有値問題について,上記にあるような既に知られている結果をいくつか紹介し,我々が考えている問題である,固有多項式の根とグラフの関係について紹介する. また最後には,Min-Plus代数における固有値問題の可積分系への応用についても述べる予定である. この講演は佐藤宏平氏(小山高専),福田亜希子氏(芝浦工業大学),西田優樹氏(同志社大学)との共同研究に基づいたものである.


第12回
2018年3月9日15:30- 岩手大学理工学部ものづくり協創工房 (銀河ホールのある建物の2階)
隠居良行(九州大学大学院数理学研究院)
Stability and bifurcation analysis of the compressible Navier-Stokes equations

層状領域や柱状領域における流体方程式の定常解や時間周期解の安定性解析は流れのパターン形成や乱流への遷移に関する格好の研究対象として古くから研究が行われてきた. この講演では圧縮性Navier-Stokes方程式の定常層流解の安定性,および定常層流解の不安定性とそれに伴う時空周期的進行波解や空間周期的渦パターンの分岐に関する結果を紹介する. この講演は西田孝明氏(京都大), 寺本有花氏(九州大)との共同研究にもとづくものである.


第11回
2018年1月19日15:30- 岩手大学理工学部第3会議室
笠井博則(福島大学共生システム理工学類)
ある固有ベクトルの導出法とペナルティー法による有界領域上の固有値問題の近似解法

一般の有界領域における偏微分方程式の解を数値計算する場合,通常は有限要素法や領域に適合するメッシュによる差分法で計算がされる。 しかしながら,数値計算のプロでない人間にとっては,上記の方法はやや敷居が高く,数値計算を行う場合の障害になっていることが少なくない。 一方で,ペナルティー法(処罰関数法)を用いて,長方形領域での有限差分法で一般の有界領域における偏微分方程式の解を近似計算する 方法が知られているが,この方法に対する数値解析的な研究はそれほど知られていない。 今回の発表では,一般の有界領域上で定義された微分作用素に対する固有値問題の,(矩形領域における有限差分法を含む)ペナルティー法を 用いた近似解法について紹介する。また,固有値が与えられた場合の固有ベクトルの表現公式を用いて,ペナルティー法を用いた場合の 固有値・固有ベクトル(固有関数)の収束・誤差評価についても紹介する。


第10回
2017年12月22日15:30- 岩手大学理工学部第3会議室
降旗大介(大阪大学サイバーメディアセンター)
ボロノイ格子における有限差分法と離散変分

微分方程式の数値解析において,問題の持つ symplectic 性や変分構造などの数学的性質を保つようにデザインされた特別な数値スキームを一般に構造保存数値解法(structure-preserving method)などとよび,近年はこうした解法の研究が一定の進展を見せている. これら構造保存数値解法の研究において一番の困難はその問題が持つ数学的性質が本来は極限操作で定義される連続的な数学,すなわち,微分や積分の性質と,それらの間の関係性に本質的に立脚することにある. なぜなら,得ようとしている数値スキームは極限操作「抜き」のかなり限られた数学計算のみから構成しなければならないため,このいちばん重要な立脚点を離散近似することになるのだがよほど適切な離散近似でなければ数学的な作用素同士の整合性の多くが失われてしまうという現状があるからである. これは,2次元以上の問題の自由格子上で gradient や Laplacian の離散近似を導入した数値スキームが由来のよくわからない誤差を蓄積する,というような問題として顕在化し,われわれを困惑させる.

このような現状に対し,こうした作用素の離散近似が保つべき最低限の整合性をあらためて表式化したうえでボロノイ格子の性質を調べてみると,興味深いことに,ボロノイ格子上で適切に定義した離散作用素は,直交格子に大変近い,数学的に素直な性質を持っていることが明らかになる. そして,この素直な性質をそのまま適用することで,離散的な変分操作をボロノイ格子上で定義でき,その結果,離散変分導関数法という方法に基づいて,変分構造を再現するような数値スキームをデザインすることが可能である. 本講演では,こうしたことがらについて述べ,そして実際にそうした数値スキームで計算が可能であることを示す.


第9回
2017年11月24日15:30- 岩手大学理工学部第3会議室
小林健太(一橋大学大学院商学研究科)
三角形・四面体上の補間誤差評価とその有限要素法への応用

有限要素法は広く用いられている数値解析手法であり、さらに、その構成法が関数解析と相性が良いこともあって、誤差解析についても理論的な研究が進んでいる。 三角形要素や四面体要素を用いる有限要素法の誤差解析においては、三角形や四面体上の補間誤差評価が本質的な役割を果たしている。 講演では、まずは有限要素法について一般的な解説を行い、次いで、補間誤差評価についての研究の現状と、その有限要素法への応用について解説する。


第8回
2017年10月6日15:30- 岩手大学理工学部第3会議室
丸野健一(早稲田大学基幹理工学部)
離散可積分系と数値計算

ソリトン方程式の解法の1つである逆散乱法の発見と代表的な可積分系である戸田格子の発見は共に1967年になされ,今年で50周年を迎える. 1970年代後半から1980年代前半に行われた広田やAblowitz-Ladikらによる可積分系(ソリトン方程式)の離散化に関する先駆的な研究の後,離散可積分系の研究が国内外で飛躍的に発展し,現在では数値計算分野をはじめとして様々な分野で離散可積分系が応用されている. 本講演では,離散可積分系についての基礎的事項を概観した後,主に離散可積分系の数値計算との関わりについて解説する. 特に,特異性,多価性のある解を持つソリトン方程式(WKI 形式に属するソリトン方程式)の解の構造を保つ離散化によって得られる自己適合移動格子スキームについて解説する. 自己適合移動格子スキームとは,大変形が生じる領域に自動的に細かいメッシュを自動生成していく差分スキームのことである. 自己適合移動格子スキームの背後にはホドグラフ変換と呼ばれる保存則と深く関連する座標変換があり,ホドグラフ変換を離散化することが自己適合移動格子スキームの鍵となる. このとき離散化した保存則の保存密度が自己適合移動格子スキームの格子間隔になり,このことによって自己適合移動格子スキームは非常に精度のよい数値計算法となる. 講演では自己適合移動格子スキームの構築法と数値計算例,離散曲線の運動との関連等を解説する予定である.


第7回
2017年7月21日15:30- 岩手大学理工学部22番講義室
岡部考宏(弘前大学教育学部)
Remark on the strong solvability of the Naiver-Stokes equations in the weak $L^n$ space

本講演では、全空間における非圧縮ナビエ・ストークス方程式のスケール不変な弱ルベーグ空間における強可解性について考察を行う。 外力がない場合の同空間における可解性は、Kozono-Yamazaki(1995)や Barraza(1999)などにより得られている。 本講演では、外力がある場合の強可解性について考察する。 弱ルベーグ空間ではストークス半群が強連続ではないが、外力に付加条件を課すことで強解を構成する。 さらに、外力に要求された性質を持つような最大の部分空間の特徴付けと、外力に対する条件が強可解性のための必要条件ではないことの注意について述べる。 また、時間周期問題への応用を試みる。 本講演は、筒井容平氏(信州大学)との共同研究に基づく。


第6回
2017年6月6日15:30- 岩手大学理工学部16番講義室
赤木剛朗(東北大学理学部)
勾配不等式とその応用について

(線形/非線形)拡散方程式や Allen-Cahn / Cahn-Hilliard 方程式は勾配構造を持ち, ある種のエネルギー / エントロピー汎関数の発展に単調性を伴う. そのような勾配構造を有する時間発展系に纏わる長時間極限問題では, 時間変数を無限大へ飛ばしたときの極限の一意性に関する問題がしばしば生じる. そのような問題に対する幾つかの処方箋が知られているが, ここでは Lojasiewicz-Simon 不等式に代表される勾配不等式を用いた手法について焦点を当て, それに関連した近年の結果を紹介する. 主に定常点の安定性解析への応用例として, Fast diffusion 方程式の消滅解の漸近形に対する安定性解析を取り上げる. その他, 時間が許せば, fractional Laplacian に対する同不等式と fractional Cahn-Hilliard 系への応用についてもコメントしたい.


第5回
2017年5月12日15:30- 岩手大学理工学部22番講義室
澤田宙広(岐阜大学工学部)
種々の非圧縮流体方程式の局所適切性の限界について

非圧縮流体の運動を記述するナヴィエ・ストークス方程式、オイラー方程式、プリミティブ方程式の初期値(境界値)問題における、時間局所解の一意存在定理を中心に解説する。 それぞれの方程式について、証明手法的限界を、初期値の属する関数空間によって特徴付ける。 実際に、関数空間の滑らかの指数がある閾値を越えると、解のパラメータ連続依存性が破綻することを示す。 しかしながら、解の構造に着目すると、別の位相で計れば、時間大域解の一意存在が示される。 構成法による圧力勾配項の従属性(消滅)と最大値原理の適用が鍵となる。


第4回
2017年4月21日15:30- 岩手大学理工学部22番講義室
大江貴司(岡山理科大学理学部)
波動方程式における移動する点ソースおよび双極子の代数的推定法と数値解析

波動方程式における波源推定問題はソース逆問題の一種であり、数理的な興味のみならず、音源推定や地震の震源推定、また電磁波の発生源推定などの数理モデルとして現れる、応用上も重要な問題である。 波源の数理モデルとしては様々なものが考えられるが、本講演ではシンプルかつ応用範囲の広い点ソースおよび双極子を考える。 この場合、逆問題はモデルのパラメータである点ソースや双極子の個数、各々の点ソースや双極子の位置およびその強度(もしくは双極子モーメント)を推定する問題に帰着される。

この逆問題に対する代数的数値解法として、波源が点ソースである場合に対してはいくつかの手法が提案されている(文献[1-3,5])。 しかし、これらの方法の多くはソースの位置は固定されていることを仮定したものである。 また、位置が移動する場合を考慮したものとしては[4]があるが、単一のソースに対した手法であり、複数のソースが存在する場合については対応できない。

本講演では、[5,6]の結果を拡張し、複数の点ソースあるいは双極子が領域内を移動する場合に対する代数的な推定法を提案する。 また数値実験により、手法の有効性および限界について示す。

[1] Ando, S., Nara, T. and Levy, T., J. Acoust. Soc. Am., 134(4), pp. 2799-2813 (2013).
[2] El Badia, A. and Ha-Duong, T., C. R. Acad. Sci. Paris, 332, Serie I, pp. 1005-10 (2001).
[3] El Badia, A. and Ha-Duong, T., Inverse Problems, 17, pp. 1127-39 (2001).
[4] Nakaguchi, E., Inui, H. and Ohnaka, K., Inverse Problems, 28, 065018 (2012).
[5] Ohe, T., Inui, H. and Ohnaka, K., Inverse Problems, 27, 115011 (19pp) (2011).
[6] Ohe, T., Mathematical Backgrounds and Future Progress of Practical Inverse Problems (Mathematics for Industry Research No. 5), 27-54, (2016).


第3回
2017年3月17日15:30- 岩手大学理工学部12番講義室
松江要(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 / カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所)
爆発解の力学系と精度保証付き数値計算

微分方程式の爆発解はその適切性を崩し、ダイナミクスの「特異性」を発現する厄介な対象です。 数学・物理・数値解析の観点から爆発解の様々な研究がありますが、 具体的な系において爆発解が存在するか、「いつ、どこで、どのように」爆発するか、その具体的プロファイルはどのようになっているかは非常に基本的かつ難しい問題となっています。

本講演では、力学系の観点から爆発解を取り扱います。 無限遠を特異点とみなして特異点解消し、「無限遠ダイナミクス」と「時間スケールの変換」に注目し、無限遠不変集合の安定多様体上の軌道として爆発解を特徴付けます。 特に、サドル型無限遠平衡点へ向かう「定常爆発」、サドル型無限遠周期軌道へ向かう「周期爆発」のひとつの特徴づけを得られます([1])。

さらに、力学系の枠組みは精度保証付き数値計算と非常に相性が良く、不変集合の周りの漸近挙動を記述する「リャプノフ関数・錐」を使うことで爆発解とその爆発時刻を精度保証付きで数値計算ができます。 まず斉次な多項式ベクトル場の場合に結果を得られ ([2])、今回新たに「型」に付随する一般のベクトル場に対しても、筑波大学の高安亮紀さんとの取り組みによって爆発解の精度保証計算の成功例を得られました([3])。 本講演では爆発解の精度保証計算の例までお話する予定です。 基礎となるアイデアから、なるべくイメージが湧きやすいようにお話します。

[1] : K. Matsue, arXiv: 1611.06346
[2] : A. Takayasu, K. Matsue, T. Sasaki, K. Tanaka, M. Mizuguchi and S. Oishi, JCAM, 314 (2017), 10-29.
[3] : K. Matsue and A. Takayasu, in preparation.


第2回
2016年11月25日16:30- 岩手大学理工学部12番講義室
田中健一郎(武蔵野大学工学部)
重み付きハーディ空間における関数近似と数値積分に対する近似公式の設計に対するポテンシャル論的アプローチ

本発表では,重み付きハーディ空間というある解析関数の空間において,十分に高精度な関数近似公式および数値積分公式の設計法を報告する.ここで考える重み付きハーディ空間は,実軸を含む複素平面上の帯状領域で解析的で,重み関数で指定される重み付きノルムに関して有界となる関数の全体からなる空間である.この空間は,数値計算の対象となるような,一定の条件を満たす解析関数を,適当な変数変換によって変換したものの全体と見なすことができる.このような変数変換は,高精度な計算を実現するためになされる.例えば,有効な数値積分公式として世界的に著名な二重指数関数型(DE)公式では,二重指数関数型(DE)変換と呼ばれる変数変換が効果的に用いられている.また,有効な関数近似公式の一つであるDE-Sinc公式でもDE変換が用いられる.

このように,重み付きハーディ空間での関数や積分の近似は基本的な問題と言えるが,この空間において「最適」な公式はそれぞれどのようなものかは,これまで一部の場合についてしか分かっていなかった.本研究では,まず関数近似に対して,一般的な重み関数の場合について,最適な公式を求める問題をポテンシャル論の方法を用いて定式化した.そして,それを近似的に解くことで公式を設計し,また,それらの公式の理論的誤差評価も与えた.これらの公式の厳密な最適性はまだ示せてはいないものの,従来のSinc公式よりも高精度になることが数値実験で観察できている.さらに,数値積分に対しても,最適公式を特徴づける数学的条件を導出した上で,関数近似と類似の方法によって,高精度公式を設計した.これについては厳密な誤差評価は得られていないが,やはり数値実験によって,従来の公式よりも高精度な公式が得られていることが観察できた.特に,重み関数が二重指数関数的な減衰を持つ場合について,設計した公式がDE公式よりも高精度となることが観察できた.本研究は,岡山友昭氏(広島市立大学),杉原正顯氏(青山学院大学)との共同研究である.


第1回
2016年9月2日16:30- 岩手大学理工学部12番講義室
宇佐美広介(岐阜大学工学部)
ある種のLanchesterモデルの正値解について

ランチェスター(F. W. Lanchester)は1916年に航空機による戦闘(combat)を記述する単純な連立常微分方程式系を提案した.このタイプの方程式はその後,他の戦闘状況の記述や経済現象等の記述にも適用できることが認識されるようになり,OR研究者等による数値解析が多く行われた.本講演では一般化されたランチェスターモデルを数学的に考察し,解の種々の性質を明らかにする.また,そのような性質の現実的な解釈をも考える.

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セミナー幹事

宮島信也 (岩手大学理工学部) miyajima (at) iwate-u (dot) ac (dot) jp