本研究グループの研究内容
本研究グループの研究内容
ブタは我々人類にとって重要な蛋白源です。近年、ブタのゲノム構造が明らかになりました。そのことによりブタの経済形質や表現型に関する遺伝子解析は飛躍的に進歩すると考えられます。ブタのゲノムDNAを様々な方法で改変し、有用な品種を生み出す可能性がありますがブタはEmbryonic Stem Cell (ES細胞)が未だ存在しないために遺伝子の改変がかなり難しいのが現状です。我々の研究グループではブタ由来のInduced Pluripotent Stem Cell (iPS細胞)を樹立し、遺伝子改変に利用することを目指しています。加えてiPS細胞を利用すれば優秀な個体を保存することが出来ます。多くの家畜では肥育する際に去勢(雄の生殖能力をなくすこと)が行われており、優れた形質を示す個体であってもその形質が明らかになった後に、後代(子供)をとる事はできません。このような制限を乗り越えるためにブタ由来のiPS細胞は有用な役割を果たすと考えられます。
加えて、マウスのiPS細胞を使用して新たな実験系を構築しようとして模索しています。iPS細胞はES細胞と同様にゲノムの高いメチル化能力を持ちます。この活性をうまく利用すれば新たな生理活性を持つ物質を見つけることができるかもしれません。
ここには書ききれませんが、全国の大学、国立研究所、学内の様々な研究グループと共同研究が進んでいます。 以下に代表的な研究プロジェクトを挙げます。
動物由来iPS細胞の樹立と利用に関する研究
希少野生動物由来の培養細胞の樹立と保存に関する研究
コーヒーの肝炎および肝臓癌予防作用に関する研究
近年、ヒトの疫学調査によってコーヒーを一日に5杯以上飲む人々は統計学的に有意に肝炎および肝臓癌にかかりにくいことが明らかになってきました。しかしこのコーヒーの予防効果は単なる統計における見かけ上のものなのか、どのような機序によって生じるのか全く不明です。そこで我々はコーヒーの肝炎および肝臓癌予防採用の有無、加えてその作用機序について考察することを目的に研究を進めています。
近年、野生動物の多くが人間の活動によって絶滅の危機にさらされています。我々の研究室ではローランドアノア(スイギュウの一種)、アマミノクロウサギ、ヤンバルクイナ、ケナガネズミ、ウミガメやゾウなど、絶滅に瀕した動物種の培養細胞を樹立し、次世代の人々のために研究・種の保全のための試料として保存する研究を名古屋港水族館、国立環境研究所、京都大学の野生動物研究センターなどの複数の機関と連携して行なっています。現在主に行なっているのは、ローランドアノア、アマミノクロウサギ、ヤンバルクイナ、ケナガネズミ、ウミガメやゾウ由来の細胞の樹立と保存です。我々ヒトの地球上での活動は動物たちの住処や繁殖地を奪うことになり、多くの動物たちを絶滅に追いやってきました。本来ならばトキなどのように、大掛かりな保護と繁殖活動が行うことが出来ればそれが一番です。しかしそれには莫大な予算と労力が必要です。残念ながら絶滅に瀕している動物たちの血液、組織、ゲノムDNAを含めて全ての生物試料を冷凍保存しようという試みがアメリカでは行われています(Frozen Zooプロジェクト)。我々の研究グループではこれらの希少野生動物から培養細胞を樹立し、次世代の研究のために生きた細胞を保存するプロジェクトを発想しました。これらの細胞は将来のゲノム情報の解読に役立つだけでなく、細胞を利用した機能アッセイ、加えて発生工学技術を利用した個体の再生に役立つ可能性を持っています。将来的には人工多能性幹細胞技術を利用して個体の再生までを視野に入れ、活動を行なっています。
無限分裂化細胞に関する研究
我々はヒトで開発された、無限分裂細胞化技術が幅広い動物種で適用可能であることを見出しました。細胞周期に関連する遺伝子、特にCyclin 依存性キナーゼと、サイクリンは酵母からヒトまで高い保存性を有しているのです。通常、細胞は一定の分裂回数を超えると、増殖が停止し「細胞老化」という状態に至ります。従来は、SV40T抗原などのがん遺伝子を使用して細胞老化を超えて無限分裂を誘導していたのですが、これでは染色体やゲノムの不安定性を生じることがわかっていました。我々は老化蛋白質p16のシグナル経路をバイパスすることで、ゲノムや元の細胞の状態をできるだけそのままに、幅広い動物種で無限に細胞増殖することを明らかにしました。この無限分裂化技術を利用すれば、世界中の研究者と研究材料として共有化することが出来ます。また細胞は個体を作るための全ての遺伝子セット、すなわちゲノムを持っているので将来的に発生工学的手法を適用することで個体の再生の可能性があります。