STEMCCAを用いたマウスiPS細胞の作成
1日目
コンフルエントに達した4枚の293T細胞を21枚にexpandする。Dish一枚あたりの細胞数が3×106個になるようにする。18枚をSTEMCCA、3枚を遺伝子導入指標のcop GFPに用いる。
2日目
① opened(無血清・無抗生物質)のDMEMを使う分だけ50ml チューブに分注しておく。(コンタミ防止のため)
② 1.5mlチューブにDNA Solutionを作成する。
Tube 1
HIV-gp 20μl (2×18=36μg分必要、濃度1,800ng/μlなので)
pCMV-VSV-G-REV 20μl (2×18=36μg分必要、濃度1,800ng/μlなので)
STEMCCA-loxP 36μl (2×18=36μg分必要、濃度1,000ng/μlなので)
Tube 2
HIV-gp 3.4μl (2×3=6μg分必要、濃度1,800ng/μlなので)
pCMV-VSV-G-REV 3.4μl (2×3=6μg分必要、濃度1,800ng/μlなので)
pCDH-MCS-EF1-copGFP 12μl (2×3=6μg分必要、濃度500ng/μlなので)
③ 50mlチューブに1.のDMEMを14.6ml(800μl×18)、15mlチューブに2.4ml(800μl×3)用意する。
④ PEIを50mlチューブには324μl(18×18)、15mlチューブには54μl(18×3)加え、5分間静置する。(時間を正確に!!)
⑤ ④のチューブに②のDNA Solutionを加え、15分間静置する。(時間を正確に!!)
⑥ 用意してある293T細胞のdishに⑤を800μlずつ加え、すぐに混ぜる。(無血清培地に細胞を長く晒すと細胞が死ぬ、最後に100回ほど振って混合する)
4日目
ホルスコリン溶液を準備する。
ホルスコリン (和光: 063-02193) 25 mgをDMSO (SIGMA: D2650 Hybri-Max) 6 mlに溶解。1/1000溶液として、培養液に加える。CMVプロモーターの活性を高めて、ウィルスのパッケージング効率を上昇させる。(最終的に6mlになるように作る、ホルスコリンのビンには6ml入らないので、少しずつ加えて溶解させたら15mlチューブと行き来させて全量を溶かし調整する)
①50mlチューブにDMEM-10%FCS(つまり通常培養に用いてるもの)を35ml分注する(dish3枚分)。
②①にホルスコリン溶液を35μl加える。
③古い培地を捨て、②を10.5mlずつ各dishに加える(壁面からゆっくり)。
④①〜③をSTEMCCA6セット(18枚)、copGFP1セット(3枚)分行う。
⑤さらに48時間培養する。
6日目
ウィルス濃縮液(4xPEG)の用意
※レンチウィルス濃縮液は市販されているが高価である。
1L作っても良いが溶解に非常に時間がかかるので500mlで記す。
①500ml量れるビーカーやフラスコ、メートルグラスを用意する。
②①の容器にスターラーバーを入れる。
③PEG-6000(ナカライテスク:28254-85)を160g入れ、320mlまで超純水を加える(最終的に500mlに調整するので400ml程度まで加えても良い)。
ここで撹拌を開始し完全に溶解させる。ここで固形物を残したまま以降の過程に移るとHEPESが永遠に溶けなくなる。高濃度のため粘性が高く、撹拌の際小さな泡が生じ、粉と混同しやすいので注意する。
④5M NaClを40ml加えてまた完全に溶解する。
⑤20mlの1M HEPESを加え、また完全に溶解する。
HEPESは自分で調整しても良いが、劣化とコンタミ防止のため調整済の試薬を推奨する。(ナカライテスク:17557-94)
⑥必要に応じて1M NaOHでpHを7.4に調整する。
⑦超純水で500mlラインまでfill upする。
⑧オートクレーブ可能なビンに移してオートクレーブし、冷暗所で保存する。(HEPESを含む液体は長時間の光曝露で過酸化水素を発生させるため)
ウィルス液の回収(※ウィルスに関わる作業は手袋をつけること!)
①蛍光顕微鏡でcopGFPの蛍光を確認し、ウィルス産生を確認する。
②コンタミしていないかどうか確認し、dish3枚分の培地を1本の50mlチューブにまとめる。(STEMCCA6本、copGFP1本になる)
25mlシリンジで培地を吸い、0.45μm Minisart(ザルトリウス:17598)を通し、新しい50mlチューブに移す。シリンジとフィルターはdish6枚分使用したら、新しいものを使う(財政面を考慮したただの目安である)。
③それぞれの50mlチューブに上記ウィルス濃縮液をウィルス液の1/3相当量加
える。濃縮液は分注前によく混合し、また加えてからもよく混ぜる。4℃で一晩置く。帰宅時、登校時など機を見て時々混ぜること。
ターゲット細胞の準備
①コンフルエントになっている細胞をトリプシン処理、遠心して集める。
②6 well plateに各well1mlずつ通常培地を加えた後、細胞が1×105個/wellになるように細胞溶液を加える(targetを不死化させている場合は薄めに撒く)。
③plateを振り、細胞が均等になるようにする。翌日感染に用いる。
7日目
ウィルス液の回収(続き)
①ウィルス液をもう1度混ぜ4℃、3,500rpmで1時間遠心する。
②デカントで上清を捨てる(廃棄の際は不活化処理を忘れないこと)。
③ペレットに1mlのDMEM-FCSを加え、ペレットを剥がす程度に少しsuspendする。
④③をそれぞれ1本のチューブに集め(STEMCCA6ml、copGFP1ml)suspend、さらにDMEM-FCSを加え、STEMCCA9ml、copGFP1.5mlにfill upする。
⑤④に1/1000相当量のポリブレンを加え(STEMCCA9μl、copGFP1.5μl)、感染に使用する。
ターゲット細胞へのウィルス感染
①前日用意したターゲット細胞の培地を除く(乾燥しやすいので2wellずつ作業する)。
②上記ウィルス液を1.5mlずつwellに加える。STEMCCAを4well、copGFPを1well、controlを1wellとする。
③48時間感染を行う。
9日目
mouse KSR based iPS mediumを作成する。
DMEM 500 ml
KSR 75 ml (15 %当量)
非必須アミノ酸 5ml
β-メルカプトエタノール(200倍希釈) 1ml
抗生物質-抗真菌剤混合溶液 5ml
(L-グルタミン 5ml)← 入れなくてもあまり変わらない
を加え、基本培地とする。
※培地作成時の注意
・非必須アミノ酸は結晶化していることがあるので確認して使う。
・β-メルカプトエタノールは原液(ナカライ:21438-82)を200倍希釈のち、0.22μmのフィルターでろ過滅菌して保存・使用する。
培地交換時に基本培地を必要分とり、以下4つの試薬を1/1000量加えて交換する。
LIF (参照http://www.wako-chem.co.jp/siyaku/info/bai/article/LIF.htm)
PD0325901 (参照http://www.wako-chem.co.jp/siyaku/product/life/ES_iPS/index.htm)
CHIR99021(同上)
Thiazovivin(同上)
※注意
LIF以外の3つの試薬はDMSOに溶解しており、わずかながら細胞毒性をもつ。目安として加えるDMSO溶解の試薬は1/1000量基準で5種類までにすること。
また、不死化していない細胞に感染させた場合、レンチウィルスによるダメージと、FBS10%→KSR15%の浸透圧変化で細胞が剥離してしまうことがある。場合によっては初回の培地交換は通常のDMEM-10%FBSに上記4試薬を加えたものにする。
培地交換の間隔は、最初の1週間は中2日ほどで良いが、次の週から中1日、コロニーを複数確認したら毎日にする。
(2週間ほど待ってみてコロニー出現が確認出来なければ失敗と見なしリトライしたほうがよい)