Laboratory for Combustion Science and Technology
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<Department of Science and Engineering
Faculty of Science and Engineering
Iwate University

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   研究背景
   Background

   ”燃焼”は,自動車や航空機,ロケット,火力発電所など,我々の生活のいたるところで使用されていますが,主に化石燃料を用いることから,燃焼資源の枯渇の問題があります.また,燃料として一般に用いられる天然ガス,ガソリン,軽油,重油を燃焼させると二酸化炭素が排出されますので,地球温暖化の問題もあります.これらの問題を解決するには,燃焼器の低燃費化・排気浄化が必要であり,次世代に豊かで住みよい地球環境を引継ぐためにも,燃焼技術に関わる研究開発が急がれています.当研究室では,燃焼現象に関わる基礎研究を中心に活動しています.
 このページでは,現在行っている研究について紹介します.

 
 
  燃料の濃度変動に対する予混合火炎の応答特性に関する研究
Response Characteristics of Premixed Flame to Fuel Concentration Oscillation
 
     
   ガソリンを直接燃焼室に噴射する,直噴ガソリンエンジン内において,燃料濃度の分布は不均質であることから,火炎は非一様な燃料濃度分布を有する混合気中を燃え広がることになります.ガスタービン燃焼器においても,燃料濃度の振動による振動燃焼が観察されています.この燃料濃度の不均一性を燃料濃度の正弦波振動でモデル化することによって,燃料濃度の正弦波振動が火炎の応答に及ぼす影響を調査しています.   
     
     
  Response of CH4/air flame to fuel concentration oscillation  
     
   この実験では,バーナから上に向かってメタンと空気の混合気を噴出させています.この混合気をバーナの上部に設置している壁に衝突させて着火すると,動画に見られる円盤形状の火炎が形成されます.ここで,バーナ出口における混合気の吹出し速度を一定とし,燃料濃度だけを正弦波的に変化させると,火炎は上下に移動します.この研究において,濃度変動だけを与えているにも関わらず,火炎が移動することによって混合気の流れを変化させることなどが世界で初めて観察されました.流れの変化は燃料や酸素の輸送にも影響を与えるため,より詳細な調査を進めています.
 
 
     
  燃料ノズルの形状が拡散火炎のすす排出に及ぼす影響
Influence of fuel nozzle geometries on soot emission from diffusion flame
 
     
   ボイラーなどの燃焼器では,拡散燃焼(非予混合燃焼)が多く用いられます.拡散火炎は,燃焼器の構造を簡単にできる一方,すすが排出しやすいという欠点があります.当研究室では過去に,燃料流を能動的に制御することによって拡散火炎からのすす排出を抑制できるのではとのアイデアに基づき実験を行ったところ,逆にすす排出が促進される結果を得てしまいました.そこで, 燃料流を受動的に制御するといった,逆転の発想で,この研究テーマが生まれました.実際に,断面形状が円形,正方形,三角形の燃料ノズルを製作し,実験を行ったところ,燃料流量がある値を超えると,円形以外のノズルにおいてすす排出が抑制されることが明らかとなりました.  
     
   
Diffusion Flame Formed on Square Nozzle
左の写真は,正方形の燃料ノズル上に形成される拡散火炎の様子を示しています.燃料ノズル近傍において,火炎の輪郭は正方形に近い形状ですが,上方に行くにつれて火炎の輪郭は円形に変化しているように見えます.しかし,火炎の構造(例えば,すすの濃度分布)を調べてみると,火炎の基部だけではなく,火炎の先端にも特徴的な構造が見られることがわかってきました.現在,流れ場と火炎構造を詳細に調査するため,高速度ビデオカメラや高出力レーザーを用いて実験しています.  
       

  円筒状拡散火炎の構造と消炎に関する研究
Structure and Extinction Characteristics of a Cylindrical Diffusion Flame
 
 
 航空機や自動車用エンジンなどでは,大きな出力を得るために,流れに乱れを与えて燃焼させています.このときに形成される火炎を乱流火炎といいます.この乱流火炎の局所構造を伸長・収縮を受ける曲率を持った層流火炎の集合体と考えるLaminar Flamelet Conceptが1980年代に提案され,これに関する基礎研究が数多く行われています.本研究は伸長と曲率の効果を同時に受ける円筒状の拡散火炎を研究対象とし,伸長と曲率が,火炎の構造と消炎に及ぼす影響について調査しています.  
 
 
Schematic of the burner C3H8-N2 vs. air flame  CH4-N2 vs. air flame  
Fuel dilution rate = 80 % Fuel dilution rate = 50 %  
       
  本研究で観察される円筒状拡散火炎の最小直径は約2.5mmであり世界最小です.火炎の直径が非常に細いので,プロパン(C3H8)やメタン(CH4)を燃料として用いた火炎においても,火炎曲率の効果が燃焼特性に顕著に現れています.  

  円筒状火炎を用いた超小型燃焼器の開発
Development of Ultra-micro Combustor Using Cylindrical Flames
 

 燃焼型PowerMEMSと呼ばれる微小電源システムや微小推進システムに関する研究が行われており,その中にUltra-micro Gas turbine やMicro Rotary Engineがあります.いずれも微小領域における燃焼によって得られる熱エネルギーを利用して動力を得ます.当研究室は,上記の円筒状拡散火炎に関する研究から得られた知見をきっかけに,超小型燃焼器の開発を行っています.  
           
   
   
  Schematic of the micro combustor  Flame Images
   
 燃料にプロパンC3H8を用いて,安定燃焼条件,温度,排気ガス特性を調査しています.提案する燃焼器をどこにでも持ち運べる燃焼器として世に送り出すためには,カセットコンロやガスライターで用いられるブタンC4H10を燃料として利用する必要があると考え,C4H10を用いたときの燃焼特性について研究を行っています.
       
  世界初の高速燃焼炎を用いたアトマイズ装置の開発
New atomization technology produces fine amorphous metal powders

 溶融金属を超音速燃焼噴流で微細化する世界初のアトマイズ技術を,東北大学金属材料研究所,ハード工業有限会社(青森県八戸市)とで共同開発しました.これは世界初のアトマイズ技術であり,共同開発した技術について,岩手大学,東北大学そしてハード工業有限会社とで特許出願しました.
    
 
   
  Schematic diagram of the newly developed counter-flame jet atomization (CFJA) process  SEM image of amorphous alloy powder using a specific rapid cooling system 
     
  本研究において下記2件の特許を出願しています.  
     
   ●発明名称:金属粉末の製造装置および金属粉末の製造方法 
   工業所有権区分:特許  
   出願日:2013年1月15日  
   出願番号:特願2013-004263  
   公開日:2014年7月28日  
   公開番号:特開2014-136807  
   登録日:2017年7月21日  
   特許番号:特許第6178575号(P6178575)  
     
   ●発明名称:金属粉末の製造方法および金属粉末の製造装置
   国際出願日:2014年2月3日  
   予備審査請求日:2014年5月16日  
   国際出願番号:PCT/JP2014/052467  
   国際公開日:2015年8月6日  
   国際公開番号:WO/2015/114838  
   (アメリカ,スウェーデン,イギリス,中国,韓国に出願中) 
   
本研究はJST復興促進プログラムタイプUの助成を受けて行われました.




岩手大学 理工学部 システム創成工学科 機械科学コース
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末永陽介